「涙をこらえる姿がいじらしい」「一生懸命な姿がいじらしい」のように使われる「いじらしい」という言葉。
なんとなく「健気」「かわいそう」に近いことは分かっても、どんな気持ちを表しているのか説明しにくい言葉ではないでしょうか。
「いじらしい」とは、簡単にいうと、弱い立場にある人や幼い人などの姿を見て、健気さや痛々しさを感じ、同情したり心を動かされたりする様子を表す言葉です。
「かわいそう」だけではなく、「それでも頑張っている姿が健気だ」という気持ちが含まれることがあります。
この記事では、「いじらしい」の意味・使い方・例文、「健気」「かわいそう」「愛らしい」との違い、褒め言葉として使えるのか、語源・由来までわかりやすく解説します。
「いじらしい」とは?意味を簡単に
「いじらしい」は、幼い人や弱い立場の人などの振る舞いが痛々しく、同情したくなるような様子を表す形容詞です。
「健気で、かわいそうに感じる」
「放っておけない気持ちになる」
と考えると分かりやすいでしょう。
たとえば、
「泣くのを我慢している子どもの姿がいじらしい」
という場合は、単に「かわいい」と言っているのではありません。
つらそうなのに我慢している姿を見て、かわいそうに感じながら、その健気さにも心を動かされているというニュアンスがあります。
「いじらしい」の読み方と品詞
「いじらしい」の読み方は、
いじらしい
です。
品詞は形容詞です。
「いじらしい姿」
「いじらしい様子」
のように名詞を修飾するほか、
「その姿がいじらしい」
のようにも使います。
名詞形は「いじらしさ」です。
例:
- あの子のいじらしさに胸を打たれた。
- 強がる姿に、どこかいじらしさを感じる。
「いじらしい」はどんなときに使う?
「いじらしい」は、相手の弱さや幼さそのものを指すというより、その状況でも頑張ったり耐えたりしている様子を見て心を動かされたときに使われます。
子どもや弱い立場の人に使う場合
「いじらしい」は、特に子どもなど、自分より弱い立場にある人の様子について使われることがあります。
たとえば、
- 泣きたいのを必死にこらえている
- 寂しくても我慢している
- 小さな体で一生懸命に頑張っている
- つらいのに周囲を気づかっている
といった姿です。
そこには「かわいそう」という同情だけでなく、「健気だ」「よく頑張っている」という気持ちも含まれます。
大人に使う場合
大人についても「いじらしい」と表現することはできます。
たとえば、
- 本当は寂しいのに平気なふりをする
- 相手を思って自分の気持ちを抑える
- つらい状況でも弱音を見せずに頑張る
といった姿に対して使われることがあります。
ただし、「いじらしい」には見る側が相手を気の毒に思うニュアンスがあるため、本人に直接言うと、相手によっては上から見られたように感じることもあります。
「いじらしい」の使い方と例文
「いじらしい」は、人の行動や表情、様子などについて使われます。
子どもについて使う例文
- 転んでも泣かずに立ち上がろうとする姿がいじらしい。
- 母親を心配させまいと笑う子どもの姿がいじらしい。
- 小さな弟を一生懸命に守ろうとする姿がいじらしい。
- 寂しいのを我慢して手を振る姿が何ともいじらしい。
子どもについて使う場合は、幼さや弱さとともに、健気な様子に心を動かされるニュアンスが出やすくなります。
大人について使う例文
- 本当は不安なのに、明るく振る舞う彼女がいじらしい。
- 相手の幸せを願って身を引こうとする姿がいじらしい。
- つらいはずなのに、心配をかけまいと笑うところがいじらしい。
- 好きな人の前で素直になれない彼の様子が、どこかいじらしい。
大人に使う場合も、「かわいい」というより、心情を思いやって胸を打たれるような場面で使われます。
「いじらしい」は褒め言葉?
「いじらしい」は、完全な褒め言葉とも、悪い意味の言葉とも言い切れません。
好意や同情を含む言葉ですが、相手を「弱い」「かわいそう」と見るニュアンスもあるからです。
好意的に使われる場合
「健気で心を打たれる」という意味では、好意的に使われます。
たとえば、
「家族のために頑張る姿がいじらしい」
という場合は、相手の頑張りに心を動かされている表現です。
「健気だ」「放っておけない」といった温かい気持ちが含まれています。
本人に直接使うときは注意する
一方で、
「あなたっていじらしいね」
と本人に直接言うと、人によっては、
「かわいそうだと思われているのかな」
「子ども扱いされているのかな」
と感じる可能性があります。
そのため、相手を純粋に褒めたい場合は、
- 健気ですね
- 頑張っていますね
- 一生懸命なところが素敵ですね
などの方が伝わりやすいこともあります。
「いじらしい」と「健気」の違い
「いじらしい」と「健気」は非常に近い言葉ですが、中心となるニュアンスが少し違います。
「健気」は努力や心がけを評価する
「健気」は、困難な状況でも一生懸命に努力する様子や、殊勝な心がけなどを表します。
たとえば、
- 病気の母を支える姿が健気だ。
- 小さな子が一生懸命に手伝う姿が健気だ。
のように使います。
見る側がその努力や心がけを好意的に評価する表現です。
「いじらしい」は同情や痛々しさも含みやすい
「いじらしい」は、健気さだけでなく、
「かわいそうだ」「痛々しい」「放っておけない」
という感情も含みやすい言葉です。
簡単に整理すると、
健気:頑張る姿や心がけを評価する
いじらしい:健気な姿に同情やいたわしさを感じる
という違いがあります。
「いじらしい」と「かわいそう」の違い
「いじらしい」には「かわいそう」という感情が含まれることがありますが、同じ意味ではありません。
「かわいそう」は気の毒な状態に注目する
「かわいそう」は、相手の不幸や苦しさを見て、気の毒に思う気持ちを表します。
たとえば、
「雨の中で待っていてかわいそうだ」
という場合は、その人の置かれている状況を気の毒に思っています。
「いじらしい」は振る舞いにも心を動かされる
「いじらしい」は、単に状況がかわいそうなのではなく、その中で見せる姿や振る舞いに心を動かされたときに使われます。
たとえば、
「寂しいのに泣かずに手を振る姿がいじらしい」
という場合は、
「寂しくてかわいそう」
だけではなく、
「それでも我慢している姿が健気だ」
という気持ちまで含まれています。
「いじらしい」と「愛らしい」の違い
「いじらしい」と「愛らしい」は、ともに相手に好意を感じる場面で使われることがありますが、意味は異なります。
「愛らしい」はかわいらしさや愛情を感じさせる
「愛らしい」は、かわいらしく、自然と愛情や親しみを感じさせる様子を表します。
たとえば、
- 愛らしい笑顔
- 愛らしいしぐさ
- 愛らしい子犬
などと使います。
相手が困っていたり、弱い立場にあったりする必要はありません。
詳しくは、
「愛らしい」とは?意味・使い方・例文|かわいい・愛くるしいとの違いや言い換えも解説
で解説しています。
「いじらしい」は健気さや痛々しさに心を動かされる
「いじらしい」は、相手の健気な姿や、どこか痛々しい様子を見て同情したり、いたわしく感じたりするときに使います。
簡単にまとめると、
愛らしい:かわいらしく、愛情を感じさせる
いじらしい:健気で痛々しい姿に心を動かされる
という違いがあります。
「いじらしい」と「いたわしい」の違い
「いたわしい」も「いじらしい」に近い言葉です。
「いたわしい」は気の毒さが中心
「いたわしい」は、相手のつらい状態や弱った様子などを見て、気の毒に思う気持ちを表します。
「見るに忍びない」「かわいそうだ」といったニュアンスが強くなる場合があります。
「いじらしい」は健気さにも注目する
「いじらしい」は、痛々しさを感じながらも、その人の振る舞いに健気さやかわいらしさを感じる場合に使われます。
そのため、
いたわしい:苦しさや痛々しさを気の毒に思う
いじらしい:痛々しさの中にある健気な姿に心を動かされる
と整理すると分かりやすいでしょう。
「いたわしい」とは?意味・使い方・語源|「かわいそう」「痛ましい」との違いも解説
「いじらしい」の類語・言い換え
「いじらしい」に近い言葉には、次のようなものがあります。
- 健気
- いたわしい
- かわいそう
- 可憐
- いたいけ
- しおらしい
- 愛らしい
- かわいらしい
ただし、それぞれニュアンスが違います。
たとえば、
「困難でも頑張っている」
ことを強調したいなら「健気」。
「苦しそうで気の毒」
という気持ちなら「いたわしい」「かわいそう」。
「かわいらしく愛情を感じる」
ことを伝えたいなら「愛らしい」。
というように、場面によって言い換えると自然です。
「いじらしい」の語源・由来
「いじらしい」の語源については、「意地」を形容詞化した言葉ではないかとする説明があります。
ただし、語源が完全に確定しているというより、辞書でも「『意地』を形容詞化した語か」とされています。
そのため、
「意地+らしいから生まれた」
と断定するのは避けた方がよいでしょう。
古い用例としては、江戸時代の文献に「いぢらしき」という形が確認されています。
現代の「意地」には、
「意地を張る」
「意地でもやり通す」
のように、簡単には折れない気持ちを表す使い方があります。
「いじらしい」にも、弱い立場にありながら頑張る姿に心を動かされる意味がありますが、現在の意味は辞書に示される用法として理解するのが安全です。
「いじらしい」についてよくある質問
Q1. 「いじらしい」の意味を簡単に言うと?
「いじらしい」とは、健気で痛々しい姿を見て、かわいそうに思ったり心を動かされたりする様子を表す言葉です。
Q2. 「いじらしい」は良い意味?
好意的な気持ちを含むことがありますが、「かわいそう」「痛々しい」というニュアンスもあります。
そのため、単純な褒め言葉とは少し異なります。
Q3. 「いじらしい」と「健気」は同じ?
似ていますが、完全に同じではありません。
「健気」は困難な状況でも頑張る姿を評価する意味が中心です。
「いじらしい」は、その健気な姿に同情やいたわしさを感じるニュアンスがあります。
Q4. 大人にも「いじらしい」は使える?
使えます。
つらさを隠して頑張る姿や、相手を思って自分の気持ちを抑える姿などに使われることがあります。
ただし、本人へ直接使うと、子ども扱いされたように感じられる場合もあります。
Q5. 「いじらしい人」とはどんな人?
決まった性格を指す言葉ではありません。
弱音を見せずに頑張ったり、自分より相手を気づかったりする姿を見て、周囲が「健気で放っておけない」と感じたときに「いじらしい人」と表現することがあります。
Q6. 「いじらしい」と「愛らしい」はどう違う?
「愛らしい」は、かわいらしく愛情を感じさせる様子を表します。
「いじらしい」は、健気で痛々しい姿を見て、同情やいたわしさとともに心を動かされる場合に使います。
まとめ
「いじらしい」は、幼い人や弱い立場の人などの様子が健気で痛々しく、同情したり心を動かされたりすることを表す言葉です。
ポイントをまとめると、
- 「健気で、かわいそうに感じる」というニュアンスがある
- 子どもの様子に使われることが多いが、大人にも使える
- 「健気」は努力への評価が中心
- 「かわいそう」は気の毒な状態への同情が中心
- 「愛らしい」はかわいらしさや愛情を感じさせる言葉
- 「いじらしい」は単純な褒め言葉ではなく、同情やいたわしさも含む
- 語源は「意地」を形容詞化した語ではないかとされるが、断定は避ける
「いじらしい」は、「かわいい」「かわいそう」のどちらか一方だけでは表せない言葉です。
つらさや弱さがありながらも懸命に振る舞う姿を見て、思わず心を寄せたくなる――そんな場面で使われます。

