「ありがとう」と言われたときに返す「どういたしまして」。
子どものころからよく知っている言葉ですが、
「『どう』って何?」
「何を『いたす』の?」
「目上の人にも使っていい?」
と考えると、意味が少し分かりにくい表現です。
「どういたしまして」は、相手からのお礼やお詫びなどに対して、「それほどのことではありません」と丁寧に打ち消して返す挨拶です。辞書でも、謝礼や詫びの言葉などに対して使う表現とされています。
この記事では、「どういたしまして」の意味・語源・成り立ち、使い方と例文、目上の人に使えるのか、自然な言い換えまでわかりやすく解説します。
「どういたしまして」とは?意味を簡単に
「どういたしまして」は、相手から感謝やお詫びなどの言葉を受けたときに、それを丁寧に打ち消して返す挨拶です。
たとえば、
「手伝ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
という使い方です。
この場合の「どういたしまして」には、
「それほど感謝されることではありませんよ」
という意味合いがあります。
また、
「昨日は失礼しました」
「どういたしまして」
のように、お詫びに対する返事として使われることもあります。精選版日本国語大辞典でも、謝礼だけでなく詫びの言葉への返答として説明されています。
「どういたしまして」の語源・成り立ち
「どういたしまして」は、現在では一つの挨拶として使われています。
形を分けて考えると、
どう+いたし+まして
となります。
「どう」は「どのように」の意味
「どう」は、
- どのように
- どんなふうに
という意味を持つ言葉です。
「どうしましたか」
「どうすればいいですか」
の「どう」と同じです。
「いたす」は「する」の謙譲語
「いたす」は「する」の謙譲語です。
たとえば、
「私が確認します」
↓
「私が確認いたします」
のように使われます。
そのため、「どういたしまして」という形には、
「私がいったい何をしたというのでしょう」
という反語的なニュアンスがあると説明されることがあります。
つまり、
「何も大したことはしていません」
「お気になさらないでください」
という気持ちにつながっているわけです。
「どういたしまして」は直訳するとどういう意味?
現代の「どういたしまして」を、一語ずつそのまま直訳するのは簡単ではありません。
現在では、相手のお礼などを控えめに打ち消す決まった挨拶として覚えるのが自然です。
意味として近いのは、
- いえいえ
- たいしたことではありません
- お気になさらないでください
などです。
つまり、
「ありがとう」
に対して、
「そんなに感謝してもらうほどのことではありませんよ」
と返していると考えると分かりやすいでしょう。
「どういたしまして」はいつから使われている?
精選版日本国語大辞典では、「どう致しまして」の用例として、徳富蘆花『思出の記』(1900~1901年)が掲載されています。
そこでは、
「昨日は御馳走でした」
という言葉に対して、
「如何致しまして」
と返す例が確認できます。
少なくとも明治期には、現在につながるお礼への返答として使われていたことがわかります。
「どういたしまして」の漢字は?
「どういたしまして」は、
どう致しまして
と書くことができます。
また、辞書では、
如何致しまして
という表記も見られます。
ただし現在の日常表記では、
どういたしまして
とひらがなで書くのが一般的です。
メールやメッセージでも、無理に漢字にする必要はありません。
「どういたしまして」の使い方と例文
もっとも一般的なのは、感謝されたときの返答です。
お礼を言われたとき
「手伝ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
「先日はありがとうございました」
「どういたしまして」
「送っていただいて助かりました」
「どういたしまして」
このように、相手からのお礼を控えめに受け止める返事として使えます。
お詫びを言われたとき
「昨日は失礼しました」
「どういたしまして」
のように、お詫びを打ち消す意味でも使われることがあります。
ただし現代の会話では、
- いえいえ
- お気になさらないでください
- 大丈夫ですよ
などの方が自然な場合もあります。
「どういたしまして」は目上の人に使える?
ここはよく迷われるポイントです。
結論からいうと、「どういたしまして」自体が目上の人に対して文法的に失礼な言葉というわけではありません。
国語辞典編纂者の飯間浩明氏も、「どういたしまして」はきちんとした返事であり、目上に使うこと自体が失礼なのではないと説明しています。
ただし場面によっては避けた方が自然
一方で、実際のビジネス会話では、
「どういたしまして」
と返すと、人によっては少し偉そう、または相手の感謝を強く打ち消しているように感じることがあります。
そのため、上司や取引先から感謝された場合には、
- いえ、とんでもありません
- お役に立てて何よりです
- こちらこそありがとうございます
- 恐れ入ります
などに言い換えると自然です。
上司に「ありがとう」と言われたら何と返す?
場面によって返し方を変えると自然です。
手伝ったことへのお礼
上司:
「手伝ってくれてありがとう」
返答:
「いえ、お役に立てて何よりです」
または、
「とんでもありません」
などが使えます。
相手にも感謝したい場合
「こちらこそありがとうございます」
と返すのも自然です。
相手から一方的に感謝される関係ではなく、自分にも感謝する理由がある場合に向いています。
褒められた場合
「ありがとうございます」
「恐れ入ります」
などが使いやすいでしょう。
必ずしも「どういたしまして」に置き換える必要はありません。
「どういたしまして」の言い換え
「どういたしまして」は、相手や場面によってさまざまに言い換えられます。
親しい相手への言い換え
友人や家族なら、
- いえいえ
- 全然いいよ
- 気にしないで
- いいよ
- こちらこそ
などが自然です。
たとえば、
「手伝ってくれてありがとう」
「いえいえ、全然いいよ」
のように使えます。
丁寧な言い換え
少し丁寧に返すなら、
- いえいえ、とんでもありません
- お気になさらないでください
- お役に立てて何よりです
- こちらこそありがとうございます
などがあります。
相手との関係や、何について感謝されたのかによって選ぶとよいでしょう。
「どういたしまして」と「とんでもないです」の違い
「とんでもないです」は、相手の感謝や評価を強く打ち消すときによく使われます。
「どういたしまして」
相手のお礼などを丁寧に受け止めながら、
「それほどのことではありません」
と返す表現です。
「とんでもないです」
「そんなことはありません」
と、より強く否定する意味があります。
たとえば、
「本当に助かりました。ありがとうございます」
と言われたとき、
「どういたしまして」
でも返せますが、
「いえいえ、とんでもないです」
と返すと、より強く謙遜する印象になります。
ただし、ビジネスでは「とんでもないです」よりも「とんでもありません」「とんでもないことでございます」などを使う人もいます。
「どういたしまして」と「こちらこそ」の違い
この二つは同じ意味ではありません。
「どういたしまして」は相手のお礼を受ける
「ありがとう」
に対して、
「どういたしまして」
と返す場合、自分が相手のためにした行為について、感謝を控えめに受け止めています。
「こちらこそ」は自分も感謝している
「こちらこそ」は、
自分の方こそ感謝しています
という意味です。
たとえば、
「今日はありがとうございました」
に対して、
「こちらこそ、ありがとうございました」
と返します。
双方に感謝する理由があるなら、「こちらこそ」の方が自然です。
「どういたしまして」は古い言い方?
現在でも間違いなく使える日本語です。
ただし、日常会話では、
- いえいえ
- 大丈夫です
- こちらこそ
- 気にしないで
など、別の表現が使われることも多くなっています。
そのため、人によっては「どういたしまして」に少し教科書的な印象を持つことがあります。
だからといって古くて間違った言葉というわけではありません。
「どういたしまして」についてよくある質問
Q1. 「どういたしまして」の意味を簡単に言うと?
相手からのお礼やお詫びに対して、
「それほどのことではありません」
と丁寧に返す挨拶です。
Q2. 「どういたしまして」の「いたす」とは?
「いたす」は「する」の謙譲語です。
「どういたしまして」は、現在では一まとまりの挨拶として使われています。
Q3. 「ありがとう」に「どういたしまして」と返していい?
もちろん問題ありません。
「ありがとう」に対する代表的な返答の一つです。
Q4. 目上の人に「どういたしまして」は失礼?
言葉そのものが失礼というわけではありません。
ただし、実際のビジネス場面では、「お役に立てて何よりです」「こちらこそありがとうございます」などの方が自然な場合があります。
Q5. 「どういたしまして」を敬語で言い換えるなら?
場面によって、
- 恐れ入ります
- お役に立てて何よりです
- こちらこそありがとうございます
- とんでもありません
- お気になさらないでください
などが使えます。
Q6. 「どういたしまして」は謝罪への返事にも使える?
使えます。
辞書でも、謝礼だけでなく詫びの言葉に対する返答として説明されています。
ただし現在の日常会話では、「大丈夫ですよ」「お気になさらないでください」などの方が自然な場面もあります。
Q7. 漢字ではどう書く?
「どう致しまして」「如何致しまして」と書けます。
ただし、通常は「どういたしまして」とひらがなで書けば問題ありません。
まとめ
「どういたしまして」は、相手からのお礼やお詫びなどを丁寧に打ち消して返す挨拶です。
ポイントをまとめると、
- 「ありがとう」への代表的な返答
- お詫びの言葉に返す場合もある
- 「どう+いたし+まして」という形
- 「いたす」は「する」の謙譲語
- 意味としては「それほどのことではありません」に近い
- 漢字では「どう致しまして」「如何致しまして」と書ける
- 目上に使うこと自体が失礼な言葉ではない
- ただしビジネスでは「お役に立てて何よりです」「こちらこそありがとうございます」などの方が自然な場合もある
- 親しい相手なら「いえいえ」「気にしないで」などにも言い換えられる
「どういたしまして」は単に「You’re welcome」に対応する言葉ではなく、相手からの感謝やお詫びを『それほどのことではありません』と控えめに受け止める日本語の挨拶です。
意味を知っておくと、相手や場面に応じて「こちらこそ」「お役に立てて何よりです」などとの使い分けもしやすくなるでしょう。

