「意味は知っていたけれど、語源を知ったらもっと好きになった」
日本語には、そんな言葉があります。
現在では当たり前に使っている言葉でも、昔の意味をたどってみると、
「そこから今の意味になったの?」
と思うような変化が見つかることがあります。
この記事では、そんな語源や成り立ちが印象的な日本語を8語紹介します。
単に響きがかっこいい言葉ではなく、意味の変化まで知ると面白い言葉を集めました。
1.かっこいい|もとは「格好がいい」
「かっこいい」は、今では、
「姿がいい」
「魅力的」
「考え方が素敵」
など、幅広い褒め言葉として使われています。
もとになっているのは、
格好がいい
という表現です。
「格好」は、姿・形・外から見た様子などを表す言葉。
「格好がいい」が会話の中で縮まり、
かっこいい
という形になりました。
現在では外見だけでなく、
「生き方がかっこいい」
「考え方がかっこいい」
のように、人の姿勢や行動への評価にも使われます。
比較的新しい形なのに、今では日本語を代表する褒め言葉の一つになっているところが面白い言葉です。
2.ありがとう|「有り難い」から生まれた
毎日のように使う「ありがとう」。
もとをたどると、
ありがたい(有り難い)
につながります。
「有り難い」は文字どおり、
あることが難しい
めったにない
という意味を持つ言葉でした。
そこから、
「めったにないほど貴重だ」
「ありがたいことだ」
と感じる意味が広がり、感謝を表すようになります。
そして「ありがたく」の音変化などを経て、現在の感謝の言葉「ありがとう」へつながりました。
今では軽いお礼にも使いますが、その背景には、
当たり前ではないものをありがたく受け取る
という古い意味があります。
3.さようなら|もとは「それならば」
「さようなら」は、別れのために最初から作られた言葉ではありません。
もとの形は、
さようならば
です。
意味は、
そうであるならば
それならば
でした。
つまり本来は、相手の話を受けて次の行動へ進むための接続表現です。
「さようならば、ごきげんよう」
など、別れ際にも使われるようになり、やがて「さようなら」だけで別れの挨拶として通じるようになりました。
現在は別れの言葉なのに、出発点は、
「それならば」
だったわけです。
意味が大きく変わった日本語の代表例といえます。
4.美しい|昔は「かわいい・いとしい」に近かった
現在の「美しい」は、
「美しい景色」
「美しい人」
「美しい音」
など、美しさ全般を表します。
しかし古い「うつくし」は、現在とは少し違いました。
古くは、
かわいい
いとしい
愛すべきだ
という意味で、妻・子・孫など身近な人への愛情にも使われています。
その後、小さなものの可愛らしさなどにも使われ、さらに意味が広がって、現在のような「美一般」を表す言葉になりました。
つまり「美しい」は、
最初から風景や芸術の美を表していたわけではありません。
古い日本語では、現在の「かわいい」「いとしい」に近かったという意外な歴史を持っています。
5.懐かしい|昔は過去だけの言葉ではなかった
現在の「懐かしい」は、
「昔の曲が懐かしい」
「故郷が懐かしい」
のように、過去を思い出す場面で使います。
しかし、古い「なつかし」は、
心がひかれる
身近にしたい
離れがたい
という意味を持っていました。
語としては、動詞の
なつく
を形容詞化したものとされています。
つまり昔は、目の前にいる人やものについても「なつかし」と言うことができました。
後世になって、昔なじみの人や出来事を慕う意味が強まり、現在の「懐かしい」につながります。
「懐かしい=過去」という現在の常識が、昔は必ずしも当てはまらなかったところが面白い言葉です。
6.いとしい|「つらい・気の毒」から愛情へ
「いとしい」は現在、
「いとしい人」
「いとしいわが子」
など、大切な存在への愛情を表します。
この言葉は「いとおしい」と関係し、さらに古い形の
いとほし
にさかのぼります。
古い「いとほし」には、
つらい
困る
気の毒だ
かわいそうだ
という意味がありました。
そこから、弱いものや気の毒なものを思いやる感情が、
かわいい
大切にしたい
いとしい
という保護的な愛情にも広がっていきました。
現在では深い愛情を表す言葉ですが、その背景に「気の毒に思う」という古い意味があるのは、意味変化として興味深いところです。
7.もどかしい|昔は「気に入らない」の意味もあった
「もどかしい」は現在、
思うようにならなくて、いらいらする
じれったい
という意味です。
「うまく説明できなくてもどかしい」
などと使います。
この言葉は、動詞の
もどく(擬く)
を形容詞化したものとされています。
古い「もどかし」には、
非難したい
気に入らない
という意味もありました。
そこから、物事が自分の思うようにならず気に入らないという感覚が、
現在の、
じれったい・はがゆい
という意味につながっています。
今の意味だけを見るとなかなか想像しにくい変化です。
8.やさしい|昔は「恥ずかしい」に近い意味だった
「やさしい」は現在、
「優しい人」
「優しい言葉」
のように、思いやりや穏やかさを表す代表的な言葉です。
ところが古い「やさし」には、
恥ずかしい
肩身が狭い
人目に対して身が細る思いがする
といった意味がありました。
語の成り立ちは、動詞の
痩す(やす)
を形容詞化したものとされています。
人目を意識して身が細るような感覚から、控えめ・上品・しとやかといった意味にも広がり、さらに現在の思いやりのある「優しい」へつながっていきました。
今では温かな褒め言葉ですが、古語ではかなり違う意味を持っていた言葉です。
語源を知ると日本語の見え方が変わる
ここまで見てきた言葉には、一つの共通点があります。
現在の意味だけからは、昔の意味を想像しにくい
ということです。
「さようなら」が「それならば」だったり、
「美しい」が「かわいい」に近かったり、
「やさしい」が「恥ずかしい」に近かったりします。
言葉の意味は、最初から固定されているわけではありません。
長く使われる中で、
意味が広がったり、
一部の意味が強くなったり、
別の場面に使われるようになったりします。
この変化そのものが、語源を調べる面白さの一つです。
「語源がかっこいい」は事実と解釈を分けて楽しもう
語源には、はっきり確認できるものもあれば、複数の説があるものもあります。
漢字を一字ずつ分解すると、それらしい物語を作れてしまうこともあります。
しかし、
漢字の意味がそのまま語源とは限りません。
「意味がきれいだから」
「話として面白いから」
という理由だけで語源と断定しないことも大切です。
辞書や古い用例を確認すると、創作された語源よりも、実際の意味変化の方が意外で面白いことがあります。
🌱 まとめ
語源が印象的な日本語を8語紹介しました。
「かっこいい」は「格好がいい」。
「ありがとう」は「有り難い」。
「さようなら」は「さようならば」。
「美しい」は、古くは「かわいい・いとしい」。
「懐かしい」は、古くは「心がひかれる・身近にしたい」。
「いとしい」は、「気の毒・かわいそう」などの意味を持った「いとほし」につながります。
「もどかしい」は、古くは「気に入らない・非難したい」という意味もありました。
「やさしい」は、古くは「恥ずかしい・肩身が狭い」に近い意味を持っていました。
語源のおもしろさは、
無理に美しい物語を作らなくても、実際の言葉の変化そのものにある
といえます。
今では当たり前の意味も、数百年前にはまったく違った姿をしていた。
そこを知ると、いつもの日本語が少し違って見えてきます。

