「憧れの人」
「海外で暮らすことに憧れる」
「子どものころから、この仕事に憧れていた」
「憧れる」は、
理想とする人や物事に強く心を引かれる
ときに使う言葉です。
ところが、この言葉の古い形は、
あくがれる
でした。
しかも、もともとは現在のような「理想の人を目指す」という意味だけではなく、
本来いる場所から離れる
心が何かに引かれて落ち着かなくなる
といった意味を持っていました。
この記事では、「憧れる」の現在の意味、古語「あくがれる」との関係、意味がどのように変化してきたのか、使い方や例文までわかりやすく解説します。
📖 「憧れる」とは?意味を簡単に
現在の「憧れる」は、
理想とするものや人に強く心を引かれ、それを求める
ことを表します。
人に憧れる
「先輩に憧れる。」
なら、
その人のようになりたい
その人を理想として心を引かれている
という意味です。
ただ「好き」というだけでなく、尊敬や理想視を含むことがあります。
暮らしや仕事にも使える
人以外にも、
- 海外生活に憧れる
- 田舎暮らしに憧れる
- 医師という仕事に憧れる
- 華やかな世界に憧れる
などと使えます。
この場合も、
自分がそこに近づきたい、実現したい
という気持ちが含まれます。
🌿 「憧れる」の古い形は「あくがれる」
現在の「あこがれる」は、古くは、
あくがれる
という形で使われていました。
本来は「その場所から離れる」
古い「あくがれる」は、本来、
いるべき場所から離れる
という意味を持っていました。
そこから、
居所を離れてさまよう
という意味でも使われました。
現在の「憧れる」からは想像しにくい意味ですが、ここが語源を考えるうえで重要です。
「かる」は「離る」に関係する
「あくがれる」の「かる」は、
離れる
という意味の「離る」と関係するとされています。
そのため「あくがれる」の古い中心には、
何かが本来の場所から離れていく
という感覚があります。
🔍 なぜ「離れる」が「憧れる」になった?
「あくがれる」は、場所だけでなく、
心が体から離れる
ような状態にも使われました。
心が何かに引かれて離れていく
古い文学では、
心が何かに引かれ、体から離れてしまう
ような表現が見られます。
たとえば、美しい花や恋しい人に心を奪われ、
心ここにあらず
の状態になることです。
そこから「あくがれる」は、
何かに強く心を引かれる
心を奪われる
という意味でも使われるようになりました。
現在の「理想を求める」意味へ
さらに時代が進むと、
「あこがれる」は、
理想とするものに心を引かれ、それを求める
という現在の意味で使われるようになります。
大まかな流れを見ると、
場所から離れる
↓
心が体から離れるほど引かれる
↓
ある対象に強く心を引かれる
↓
理想とするものを求める
と意味が変化してきたと考えるとわかりやすいでしょう。
💬 「憧れる」の使い方と例文
「憧れる」は、人・職業・生活・場所など幅広い対象に使えます。
人に憧れる
「私は子どものころから姉に憧れていた。」
→ 姉を理想の存在として見ていた。
「尊敬する作家に憧れて、小説を書き始めた。」
→ その作家のようになりたいと思った。
職業に憧れる
「子どものころ、宇宙飛行士に憧れていた。」
→ 宇宙飛行士を理想の職業として求めていた。
「華やかな芸能界に憧れる若者も多い。」
→ その世界に入りたいという気持ちを持つ。
暮らしや場所に憧れる
「海の見える家での暮らしに憧れる。」
→ そのような生活を理想として求めている。
「いつか海外で生活したいと憧れている。」
→ 海外生活を理想として思い描いている。
「憧れる」と「尊敬する」の違い
「憧れる」と「尊敬する」は、人について使うと意味が近く見えます。
「尊敬する」は価値を認める
「尊敬する」は、
相手の人格・能力・行動などをすぐれたものとして敬う
ことを表します。
「先生を尊敬する。」
なら、その人の考え方や行動を高く評価しています。
「憧れる」は自分も近づきたい気持ち
「憧れる」には、
あの人のようになりたい
自分もその世界に近づきたい
という気持ちが含まれやすいのが特徴です。
そのため、
尊敬する
→ 相手を高く評価し、敬う
憧れる
→ 理想として強く心を引かれ、近づきたいと思う
という違いがあります。
もちろん、同じ人を尊敬し、同時に憧れることもあります。
「憧れる」と「恋する」の違い
人への強い気持ちという点では、「恋する」とも似ています。
「恋する」は恋愛感情
「恋する」は、
恋愛の対象として相手を思い慕う
ことを表します。
「憧れる」は恋愛とは限らない
「憧れる」は、
- 先輩
- スポーツ選手
- 作家
- 先生
- 職業
などにも使えます。
そのため、
憧れる=恋愛感情
ではありません。
相手を理想視したり、その人のようになりたいと思ったりする気持ちも「憧れ」です。
「憧れ」と「憧憬」の違い
「憧憬」は、
しょうけい
または
どうけい
と読みます。
意味は「憧れ」に近く、
理想とするものに心を引かれること
を表します。
「憧れ」は日常的
「憧れの人」
「海外への憧れ」
のように、「憧れ」は日常会話でもよく使われます。
「憧憬」は文章語的
「異国への憧憬」
のように、「憧憬」はやや硬く、文章的な響きがあります。
大まかには、
憧れ
→ 日常的で使いやすい
憧憬
→ やや文章語的で硬い
という違いがあります。
意味そのものはかなり近い言葉です。
❓ 「憧れる」についてよくある質問
Q1. 「憧れる」とはどういう意味?
理想とする人や物事に強く心を引かれ、それを求めることです。
Q2. 「憧れる」の古語は?
古くは「あくがれる」といいました。
中世ごろから「あこがれる」という形も使われるようになったとされています。
Q3. 「あくがれる」はどんな意味?
古くは、本来いる場所から離れることや、居所を離れてさまようことを表しました。
また、何かに心を引かれて心ここにあらずとなる意味でも使われました。
Q4. なぜ「離れる」が「憧れる」になった?
古くは、心が何かに引かれて体から離れるような状態を「あくがれる」と表しました。
そこから、ある対象に強く心を引かれる意味へつながっていきました。
Q5. 「憧れる」と「尊敬する」の違いは?
「尊敬する」は相手をすぐれた存在として敬うこと、「憧れる」は理想として心を引かれ、自分も近づきたいと思う気持ちを表しやすい言葉です。
Q6. 「憧れる」は恋愛感情?
必ずしも恋愛感情ではありません。
人物・職業・暮らし・場所など、さまざまな対象に使えます。
Q7. 「憧れ」と「憧憬」は同じ?
意味はかなり近い言葉です。
「憧れ」は日常的、「憧憬」はやや文章語的な表現です。
🌱 まとめ
「憧れる」は、
理想とする人や物事に強く心を引かれ、それを求めること
を表す言葉です。
ポイントをまとめると、
- 現在は理想の人・生活・職業などに心を引かれる意味
- 古くは「あくがれる」といった
- 本来は、いるべき場所から離れる意味があった
- 「かる」は「離る」と関係するとされる
- 居所を離れてさまよう意味にも使われた
- 心が体から離れるほど何かに引かれる意味へ広がった
- 中世ごろから「あこがれる」の形も使われた
- 現在は理想とする対象を求める意味が中心
- 「尊敬」は敬うこと、「憧れ」は近づきたい気持ちを含みやすい
- 「憧れる」は恋愛だけに使う言葉ではない
今の「憧れる」から考えると、
「本来の場所から離れる」
という古い意味は意外に感じられます。
しかし、
心が何かに引かれて、自分のもとから離れていく。
そんな古い感覚をたどると、現在の、
「理想のものに心を奪われる」
という意味とのつながりが見えてきます。

