「つらい」「くるしい」「しんどい」は、心身が苦しいときに自然と使われる言葉です。
日常会話では、ほとんど同じ意味で置き換えられることも少なくありません。
しかし語源をたどると、この三つは異なる身体感覚を起点に生まれた言葉であることがわかります。
押しつけられる力、塞がれる感覚、力が抜けていく消耗——それぞれが別の苦しさを表していました。
本記事では、「つらい」「くるしい」「しんどい」の語源を比較し、日本語が苦しさをどう分けてきたのかを読み解いていきます。
つらい・くるしい・しんどい|まず結論から
- つらい:
👉 強い負荷が外からかかり、耐え続ける感覚 - くるしい:
👉 胸や呼吸が塞がれ、内側から苦しくなる感覚 - しんどい:
👉 力が尽き、心身が消耗している状態
三つはすべて「苦しさ」を表しますが、負荷の向きと質が異なる言葉です。
「つらい」の語源と原感覚
語源は「強(つ)」の感覚
「つらい」は、「強(つ)」を語源に持つ言葉です。
もともとは、
- 強く押される
- 圧がかかる
- 逃げ場がない
といった、外からの力に耐える状態を表していました。
我慢が前提の苦しさ
「つらい」は、
- 仕事がつらい
- 状況がつらい
のように、続いている負荷に耐え続ける感覚が中心です。
「くるしい」の語源と原感覚
語源は「胸が塞る」感覚
「くるしい」の語源は、「くる(塞る)」という動詞にあります。
これは、
- 胸が詰まる
- 息が通らない
- 圧迫される
といった、内側が塞がれる感覚を表していました。
身体から心へ
もともとは呼吸の苦しさを指す言葉でしたが、そこから
- 気持ちがくるしい
- 言葉が出ない
といった、心理的圧迫へと広がっていきました。
「しんどい」の語源と原感覚
語源は「精根尽きる」感覚
「しんどい」は、比較的新しい口語ですが、語源的には
- 力が尽きる
- 精が抜ける
- 立て直せない
といった、消耗状態を表します。
押されても塞がれてもいない
「しんどい」は、
- 強く押されているわけでもない
- 息が詰まっているわけでもない
ただ、もう動かせる力が残っていない状態です。
なぜ似た意味に感じられるのか
三つの共通点は、「楽ではない状態」であることです。
しかし語源的には、
- つらい:外圧
- くるしい:内圧
- しんどい:枯渇
というように、苦しさの方向が違います。
日本語が苦しさを分けてきた理由
日本語は苦しさを、
- 力の向き
- 身体の部位
- 持続か消耗か
といった 構造の違い で言い分けてきました。
そのため、「全部しんどい」でまとめず、別々の言葉として残してきたのです。
これは
➡「いたい」の語源
➡「重い」の語源
とも深くつながります。
三つの違いを一言でまとめると
- つらい:
👉 押され続ける苦しさ - くるしい:
👉 塞がれる苦しさ - しんどい:
👉 力が尽きた苦しさ
同じ苦しさでも、感じている場所が違う言葉です。
まとめ|語源で見る苦しさの輪郭
「つらい」「くるしい」「しんどい」は、似た言葉ではありますが、同じ苦しさではありません。
- 押される → つらい
- 塞がれる → くるしい
- 消耗する → しんどい
語源を知ることで、自分の状態をより正確に言葉にできるようになります。

