「すごい」は今や、
- 褒め言葉
- 驚き
- 肯定
- 否定
すべてに使える万能ワードですが、その語源は意外にも 怖さ です。
古語の 「すさまじ(凄まじ)」 が原点で、“もの寂しい・ぞっとする・恐ろしく感じる” を意味していました。
そこから、“圧倒されるほど強烈”というニュアンスに変化し、現代の“すごい!”へと発展していきました。
本記事では、この言葉がどう恐怖から驚嘆へ変わったのかを深掘りし、日本語の感情語がどのように進化してきたのかを読み解きます。
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「すごい」の意味をひと言でいうと?
現在の意味の要点
「すごい」は、“圧倒される強さ・規模・気配を感じたときの感情”を表す言葉です。
現在ではポジティブな意味が中心ですが、驚き・恐れ・圧倒・興奮など、複数の感情をまたぐ特徴があります。
日常での使われ方
- 賞賛(すごいね!)
- 驚き(すごっ…)
- 皮肉(すごいことしてくれたね)
- 恐れ(あの人、本気出すとすごい)
- 規模の大きさ(すごい量)
「すごい」は文脈で意味が変わり、圧倒的な“強さ”がキーワードです。
「すごい」の語源・由来(まずは結論)
語源の結論まとめ
語源は 古語「すさまじ(凄まじ)」。
意味は、“ぞっとするほど異様・寂しい・怖い”。
その元の語は 「すさむ(荒む)」 で、“荒れ果てる・乱れる・寒々しい”を表す言葉でした。
恐怖 → 強烈 → 圧倒
と意味が変化する中で、褒め言葉としての「すごい」へ発展。
最初の用例と時代背景
『枕草子』や『源氏物語』にも「すさまじき」「すごし」などの形で登場し、“もの寂しい・荒れた景色のよう” という意味で使われていました。
“恐れ”や“異様さ”が中心で、ポジティブさはほぼありません。
なぜ「すごい」はポジティブな言葉になったのか
元になった古語・漢字・表記
古語の
- すさむ(荒む)
- すさまじ
が語源で、漢字では「凄い」と書かれます。
「凄」の字は
- 寒さ
- 荒れ
- 恐怖
を示し、“強烈すぎて身が縮む”という感覚がもと。
意味が変化したプロセス
「荒む・恐ろしい」
→ “異常に強い”
→ “圧倒される”
→ “驚き・感動”
→ 現代の「すごい」
つまり、恐怖の強さが感動の強さに反転した という珍しい意味変化をたどっています。
日本語では“強いもの=恐れと尊敬が共存する対象”になりやすく、この文化的感覚が変化を後押ししました。
「すごい」に隠れる文化的ストーリー
当時の価値観・社会背景
古代〜中世の日本では、自然の力は“畏怖の対象”であり、強さには同時に“恐れと尊敬”が宿っていました。
- 雷
- 嵐
- 山
- 火
など、人間ではどうにもならない“強さ”に対し、恐怖と畏敬が同時に向けられていたのです。
この心理が、「すごい」の
恐怖 → 尊敬 → 驚嘆
という変化につながっています。
現代の感覚とのギャップ
現代では「すごい」はほぼ褒め言葉で、頻繁に使われる“軽い驚きの言葉”になっています。
しかし語源をたどると、もともとは “怖いほどの力” を感じた時の言葉。
現代の「すごい」が持つ微妙な“畏敬のニュアンス”は、この歴史の名残です。
似た言葉・類義語・よくある誤解
類義語との違い
・「やばい」
→ 良い・悪いの両方に振れる俗語。
・「すばらしい」
→ ポジティブ限定の賞賛語。
・「すごい」
→ “強さに圧倒される”が本質。良し悪し両方。
なので「すごい」は“強さの中立語”に近く、状況によって意味が変わる柔軟さがあります。
誤用されがちなケース
「すごく可愛い」「すごく寒い」など、副詞のように使われるケースは本来は文法的に変則的。
しかし日本語の変化により、現代では完全に定着しています。
語源エピソードを“たね”にした比喩ストーリー
日常生活での比喩
「すごい」は、夜の海に押し寄せる大きな波のような言葉です。
美しくもあり、怖くもある。
その圧倒的な強さに、心が一歩引きながらも惹きつけられる。
そんな“恐れと驚きの同居”が、この言葉の根本にあります。
語源のイメージを広げる例え話
古語「すさまじ」が「すごい」へ変化した流れは、荒れた嵐が、やがて人を感動させる景色として語られるようになる過程に似ています。
自然への畏怖が、尊敬や驚嘆へ変わる──その心理の転換が「すごい」という言葉の中に残っています。
まとめ:すごいの語源を知ると何が変わる?
語源からわかる本質
「すごい」は“凄まじい(恐ろしいほど強い)”が原点で、恐怖から驚嘆へと意味が反転した、日本語ならではの進化を遂げた言葉です。
読者への気づきメッセージ
強さを恐れながらも惹かれてしまう──
そんな感情の動きが「すごい」の本質。
語源を知ることで、日常で使う「すごい」一言が、より深みのある言葉に変わるかもしれません。

