「くるしい」は、悲しみ・苦痛・息苦しさ・心労──
人が抱える“耐えがたい重さ”を表す代表的な感情語ですが、その語源は “胸がふさがる(くる)” に由来します。
古語の 「くるし(苦し)」 は、“呼吸が詰まるような身体的苦痛”が原点で、そこから心理的な苦しさへと意味が広がりました。
本記事では、「くるしい」の語源と文化背景を深掘りし、悲しみ・つらさとの違いも含め、“苦しさ”という感情の本質に迫ります。
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「くるしい」の意味をひと言でいうと?
現在の意味の要点
「くるしい」は、“身体・心のどちらにも耐えにくい圧力がかかっている状態” を表します。
特徴は以下の3つ
- 呼吸・胸・体の圧迫
- 心の痛み・不安・葛藤
- 状況から抜け出せない閉塞感
身体と心理が結びつく日本語らしい感情語です。
日常での使われ方
- 胸が苦しい
- 仕事が苦しい
- 人間関係が苦しい
- 人生が苦しい
- やめたいのにやめられず苦しい
- 泣きたくなるほど苦しい
心身に“圧”がかかる場面で広く使われます。
「くるしい」の語源・由来(まずは結論)
語源の結論まとめ
語源は 古語「くるし(苦し)」。
意味は “胸がつまる・息が苦しい・体が痛む・つらいことが続く”。
“くる”には
- 狭まる
- ふさがる
- つまる
という意味があり、それが身体感覚としての苦しさを生みました。
最初の用例と時代背景
『万葉集』『源氏物語』など古典にも多く登場し、当初は
- 身体的に息苦しい
- 心がふさがる
という原義が中心。
後世になって、“精神的な苦悩”の意味が強まり、現代の「苦しい」が完成しました。
なぜ「くるしい」は“心の痛み”に広がったのか
元になった古語・漢字・表記
「苦しい(くるしい)」の語源の核は、“胸がつまる=苦+し” の構造。
古語の「くる(塞る)」が 身体→心へとメタファー拡張した典型例です。
意味が変化したプロセス
身体的苦痛
→ 息苦しさ・胸がつまる
→ 心がつまる
→ 苦悩・葛藤
→ 人間関係や人生の苦しさへ拡張
人間は身体の感覚で心を説明するため、身体→心理という変化が自然に起こりました。
「くるしい」に隠れる文化的ストーリー
当時の価値観・社会背景
古代の生活では、病・寒さ・飢え・自然の脅威など、“胸がつまるような身体的苦しみ”が日常的でした。
この身体ベースの苦痛が、人間関係・恋愛・社会的閉塞感など、心理表現へ転用されていったのが日本語の特徴。
現代の感覚とのギャップ
現代の「苦しい」は
- メンタルの疲労
- 社会生活のストレス
- 将来への不安
など、心理中心ですが、語源の“胸・息・身体”という感覚は今も残っています。
だから「胸が苦しい」「息ができないほど苦しい」といった言い方が自然なのです。
似た言葉・類義語・よくある誤解
類義語との違い
・「つらい」
→ 外からの強い負荷に耐えにくい状態。
・「かなしい」
→ 愛情の喪失・切なさ。
・「いたい」
→ 身体の痛みが中心。
・「くるしい」
→ 身体+心に“圧がかかる”状態。最も総合的。
誤用されがちなケース
“悲しい”“つらい”と混同されがちですが、
語源的には
- つらい=風のような圧力
- かなしい=愛情の喪失
- くるしい=胸がつまる圧迫
という違いがあります。
語源エピソードを“たね”にした比喩ストーリー
日常生活での比喩
「くるしい」は、重たい霧が胸のあたりだけに集まっているような言葉です。
息をしようとしても深く吸えず、歩こうとしても足が進まない。
心の奥まで霧が入り込み、身体と感情をまとめて覆い隠す──
それが“苦しさ”の本質です。
語源のイメージを広げる例え話
古語「くるし」が心の苦しさにも広がったのは、山の谷間に冷たい風が吹き込み、身体だけでなく心まで締めつけるような感覚に似ています。
自然の“ふさがる圧力”が心理に転写され、「くるしい」という言葉が育ったのです。
まとめ:くるしいの語源を知ると何が変わる?
語源からわかる本質
「くるしい」は“胸がふさがる(くる)”が原点で、身体的苦痛から心理的苦悩までを一語で言える日本語です。
読者への気づきメッセージ
苦しさは、心と身体が密接につながっているから生まれます。
語源を知ることで、自分の“くるしさ”を少し客観的に理解できるかもしれません。

