「子どもを怒る」「子どもを叱る」のように、「怒る」と「叱る」は似た場面で使われます。
一言で分けると、
怒る=腹を立てた感情が表に出る
叱る=相手の行動を改めさせるために注意する
です。
同じように強い口調になることはありますが、感情が中心か、相手への働きかけが中心かで違いが出ます。
「怒る」と「叱る」の違い
| 言葉 | 中心になるもの | 主な目的・状態 | 例 |
|---|---|---|---|
| 怒る | 自分の感情 | 腹を立てる、不快感を示す | 約束を破られて怒る |
| 叱る | 相手への注意 | 行動を正す、改善を促す | 危ないことをした子どもを叱る |
「怒る」は、自分の感情を表す言葉です。
一方、「叱る」は、相手に向かって注意する行為を表します。
「怒る」は腹立ちや不快な感情を表す
「怒る」は、何かに腹を立てたり、不満を感じたりしたときに使います。
人の行動に腹を立てる
約束を破られて怒った。
嘘をつかれて怒っている。
何度言っても直さないので怒った。
ここでは、話し手の「腹が立った」という感情が中心です。
人以外のことにも怒れる
理不尽な扱いに怒る。
そのニュースを見て怒りを感じた。
「怒る」は、必ずしも誰かを注意する行為ではありません。
相手が目の前にいなくても、自分の感情として使えます。
「叱る」は相手の行動を正すために注意する
「叱る」は、相手の良くない行動について注意し、改めるよう求めるときに使います。
子どもや部下を注意する
危ない遊びをした子どもを叱る。
約束を守らなかったので叱った。
同じミスを繰り返した部下を叱る。
ここでは、「腹が立ったかどうか」よりも、相手の行動を正そうとしていることが中心です。
感情的でなくても「叱る」は使える
落ち着いた口調でしっかり叱った。
理由を説明しながら叱る。
「叱る」は、必ず大声を出すことではありません。
静かな口調でも、相手の行動を改めるために注意していれば「叱る」と言えます。
同じ場面でも「怒る」と「叱る」は両方使える
一つの出来事について、「怒る」と「叱る」の両方が当てはまる場合があります。
子どもが約束を破った場合
約束を破られて怒った。
なら、親自身が腹を立てたことに焦点があります。
約束を破った子どもを叱った。
なら、子どもの行動を注意したことに焦点があります。
実際には、
腹が立って怒り、そのまま子どもを叱った。
ということもあります。
ミスが起きた場合
同じミスが続いて上司が怒った。
なら、上司の感情が中心です。
同じミスを繰り返した部下を上司が叱った。
なら、部下への注意・指導が中心です。
置き換えられる場合と、意味が変わる場合
「怒る」と「叱る」は似た場面で使えますが、完全に同じ意味ではありません。
どちらも使える例
子どもを怒る。
子どもを叱る。
日常会話では「子どもを怒る」と言うこともあります。
ただし、意味を細かく見ると、
子どもを怒る → 感情的に腹を立てるニュアンスが出やすい
子どもを叱る → 行動を正すために注意する
という違いがあります。
「怒る」のほうが自然な例
悪口を言われて怒った。
不公平な結果に怒っている。
この場合は、自分の感情を表しているため「怒る」が自然です。
「悪口を言われて叱った」とすると、「誰を叱ったのか」という別の意味になります。
「叱る」のほうが自然な例
危険なことをした子どもを叱る。
ルールを破った生徒を叱る。
相手の行動を正すことが目的なので、「叱る」が自然です。
迷いやすい「怒る/叱る」のケース
親が子どもに強く言う場合
親が子どもに怒った。
なら、親が感情を表したことに焦点があります。
親が子どもを叱った。
なら、子どもの行動を正そうとしたことに焦点があります。
強い口調だったかどうかだけでは決まりません。
上司が部下に注意する場合
上司がミスに怒っていた。
なら、ミスに対する感情です。
上司が部下を叱った。
なら、部下本人に注意したことを表します。
自分自身について使う場合
自分に怒る。
は、「自分自身に腹を立てる」という意味で使えます。
一方、
自分を叱る。
なら、「もっとしっかりしろ」などと自分自身を戒めるニュアンスになります。
「叱る=正しい」「怒る=悪い」とは限らない
「怒る」と「叱る」を、
怒る=悪い
叱る=良い
と単純に分けることはできません。
怒りを感じること自体は自然な感情です。
また、「叱る」という名目でも、相手を傷つけるような言い方になることはあります。
言葉の意味として大切なのは、善悪ではなく、
自分の感情を表しているか
相手の行動を正そうとしているか
という違いです。
「怒る」と「叱る」の見分け方
自分の腹立ちが中心なら「怒る」
- 約束を破られて怒る
- 嘘をつかれて怒る
- 不公平さに怒る
- 失礼な態度に怒る
相手への注意が中心なら「叱る」
- 子どもを叱る
- 部下を叱る
- 生徒を叱る
- 危険な行動を叱る
一言でいうなら、
「腹が立った」→ 怒る
「それはよくないと注意する」→ 叱る
と考えると使い分けやすくなります。
まとめ
「怒る」と「叱る」は、同じ場面で起こることもありますが、中心になる意味が違います。
怒る=腹を立てた感情が表に出る
叱る=相手の行動を改めさせるために注意する
たとえば、
子どもが約束を破って腹が立った。
その行動について子どもを叱った。
なら、前者が「怒る」、後者が「叱る」です。
迷ったときは、「自分の感情の話か」「相手への注意の話か」を見ると判断しやすいでしょう。
