「おそろしい」という言葉には、ただ“怖い”だけでは収まらない、“畏れ”と“恐れ”が重なる深い感情 が宿っています。
語源の中心は古語の 「おそ(畏)し」。
もともとは“人の力では及ばない存在に対して、自然に心がひれ伏す感覚”を示す言葉でした。
つまり「おそろしい」とは、
- 生命の危険を感じる怖さ
だけでなく、
- 自然・神・時代・人間そのものへの“畏れ”
まで含む、大きな感情語です。
本記事では、「おそろしい」の語源と文化背景を深掘りし、日本人が古来抱いてきた“畏怖”の感覚を読み解きます。
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「おそろしい」の意味をひと言でいうと?
現代の意味の要点
「おそろしい」は
“危険や未知、圧倒的な力を前にして身がすくむ状態”
を表す言葉です。
種類は3つ:
- 恐怖(danger fear)
- 畏怖(awe fear)
- 圧倒される強大さへの恐れ(overwhelming fear)
語源的には、“おそれる”=人間を超えた力に対する本能的な反応。
日常での使われ方
- おそろしい事件
- おそろしい結果
- 人間の欲はおそろしい
- 自然の力はおそろしい
- おそろしく美しい(反語的用法)
“人の力を超えた圧倒感”に対して使われます。
「おそろしい」の語源・由来(まずは結論)
語源の結論まとめ
語源は 古語「おそ(畏)し」。
意味は
“人間の力が及ばないほど強大で、近づくと命に関わる存在への畏れ”。
そこから
「おそる(恐る)」
→ “怖れて慎重に行動する”
という動詞が生まれ、
名詞形に修飾語「〜しい」がついて
「おそろしい」
が成立した。
最初の用例と時代背景
古典では
- 雷
- 大蛇
- 大水(洪水)
- 死
- 神仏
といった“自然と超越存在”に対して使われた。
現代のような
“犯罪が恐ろしい”
といった用途よりも、
はるかにスケールの大きな恐れだった。
「おそろしい」はどう進化してきたのか?
元になった古語・表記
古語「おそし/おそろし」には、2つの成分がある
① おそ(畏)
=“超越した力に心がひれ伏す”
② ろ(接尾語)
=状態・性質を表す語
③ しい(形容詞語尾)
=形容詞化する語尾
つまり構造は
おそ(畏)+ろ+しい
=畏ろしい → おそろしい
意味の変化プロセス
- 神・自然への畏れ
- 生死に関わる危険の恐れ
- 社会的な危険への恐れ
- 人間の心の“深い闇”への恐れ
- 比喩的に“圧倒的すぎてすごい”へ拡張(おそろしく速い など)
恐怖語の中で最もスケールが大きく、“尊厳”の意味すら帯びる珍しい形容詞。
「おそろしい」に隠れる文化的ストーリー
古代の恐怖は“自然への畏敬”だった
古代日本人は、雷・海・山・炎といった自然の力を
“畏ろしいもの” として扱いました。
- 雷神
- 山の神
- 龍(大蛇)
- 火の神
自然はただの危険ではなく、命を与え、奪い、試す存在だった。
“恐ろしい”ではなく “畏ろしい” という感覚の方が近い。
現代とのズレ
現代では
- ニュース
- 事件
- 人間の行動
に“おそろしさ”を感じる。
しかし語源は
“自然と神の力に畏れる心”
であり、人間社会だけで使うにはスケールが小さすぎることすらある。
似た言葉・類義語・よくある誤解
類義語との違い
・「こわい」
→ 身近な怖さ。心理的。
・「おっかない」
→ 荒々しい怖さ。
・「おそろしい」
→ 人間を超えた大きな恐れ(厳粛さ含む)。
・「ぞっとする」
→ 生理的反応の恐怖。
“スケールの大きい恐れ”は「おそろしい」一択。
よくある誤解
“恐ろしい=怖い”と同義にされがちだが、
語源的には
“恐(おそ)+畏(おそ)”の二重構造
を持ち、“尊敬を含む恐れ”の色合いが濃い。
語源エピソードを“たね”にした比喩ストーリー
日常生活での比喩
「おそろしい」は、海の深いところへ近づいたとき、足元だけが暗く沈んでいくような感覚です。
波は穏やかなのに、その奥にある“計り知れなさ”が胸をつかんで離さない。
見えない力に心をひっぱられる瞬間、そこに“おそろしさ”が生まれます。
語源のイメージを広げる例え話
「おそろしい」が“畏ろしい”だった頃、人は雷の音を聞くと天を仰ぎました。
怒りではなく、その圧倒的な存在の前に、自然とひざが折れるような感覚──。
語源の深層には、“巨大な力の前に立つ、人の小ささ” が刻まれています。
まとめ:おそろしいの語源を知ると何が変わる?
語源からわかる本質
「おそろしい」は
“畏れる(おそれる)”に由来し、
人間を超える力への圧倒的な恐れ を表す語。
読者への気づきメッセージ
恐れは、危険の合図であると同時に、世界の大きさを知るきっかけでもあります。
語源を知ることで、“おそろしさ”がただの恐怖ではなく
“世界との距離感”であることが分かります。

